年明け早々元旦の夕刻、テレビから「津波に備えて避難して下さい!出来るだけ早く高い所に避難して下さい!命を守る行動を!」と連呼する女性アナウンサーの声が飛び込んできました。『何かのドラマかなあ?それにしてはヒステリックに長く叫びすぎではないか~』と思っていたら、北陸能登地方で大地震が起きていたのです。私はまもなくやって来る娘夫婦のためにずっと立って正月の夕食を作っていたため、全く揺れを感じず、まさか元旦に大地震があり、大津波まで押し寄せていたとは思いもしませんでした。夜遅くになっても現地の詳細情報は入って来ず、羽田空港からバスで着いた娘夫婦を迎えに行って、お節料理と正月のご馳走で楽しく団欒していました。
翌2日は、箱根駅伝を観て初詣に出かけようとしていた矢先、またもテレビに羽田空港の滑走路で飛行機同士の衝突事故の映像が映し出され、「また!?」と映画『ダイハード』を現実に見ているような顔面蒼白気分になりました。「一日違っていたら、娘達の乗った飛行機が事故に巻き込まれていたかも知れない」と肝を冷やしながら、暫く見入っていましたが、まもなく乗客全員の無事が伝えられると家中に歓声が上がりました。しかし海上保安庁の乗組員は機長以外若い人も亡くなり、何とも言えない重苦しい気持ちの幕開けとなり、今年の日本の先行きが心配になりました。私はどこの神社で引いてもおみくじは小吉と末吉ばかりで、今年はあまり期待しないで生きていこうと思った次第です。その後も日本各地で地震が多発しており、不気味な様相を呈しています。
このところ、コロナ禍はほぼ終わりの感があるものの、インフルエンザやはしかの流行と、花粉症・黄砂・PM2.5が凄まじく、まだまだ巷にはマスクをかけている人が多く見られます。また3月は長い菜種梅雨と寒暖差の激しい天候のために体調を崩す方が多く、我が診察室は身体科のようになっていました。
そんな中、7億ドルという実感が湧かない巨額の移籍金でLAドジャーズに入団した大谷翔平選手の話題で今年も連日もちきりです。2月29日の突然の結婚発表から、ソウルでのMLB開幕戦、大谷対ダルビッシュ有、山本由伸・あざみ野出身の松井祐樹投手が観られ、大いに盛り上がった第1戦の夜、突然水原一平元通訳の解雇と違法賭博詐欺・窃盗が発覚、と次々に目まぐるしく事が起こりました。大金のある所に良からぬ人間が集まってくるのは世の常ですが、まさか最側近が…、本当に大谷翔平選手の周りの世界は、良くも悪くも野球も人生も漫画のように、漫画以上にドラマチックです。
大谷選手は、アメリカに渡って以降6年間相棒として信頼し切っていた人に最初から裏切られていたことが分かり、どれ程ショックだったことか、「ショックという言葉が正しいとは思わない。」という会見での言葉は、ショックなんてものじゃないくらい『青天の霹靂』~天地がひっくり返った気分だということでしょう。それでも野球の試合をやってヒットやホームランを打っているなんて…、普通の人なら打ちひしがれて寝込み、仕事(や野球)などとてもやっていられないでしょう。凄まじく強いメンタルです。
一方水原元通訳は、というと、実は私は初めからこの人をあまり好ましく思っていませんでした。心なしか元通訳の眼は泳いでいるようで、眉間に皴寄せ心からの笑顔が感じられず、前髪を不揃いに垂らして目を隠し気味な髪型はずっと変わらず、いつもス―パーアスリートの横にいるのに全く鍛えていなさそうな体型、などがその理由でした。ドジャースに移籍する時も何故彼を連れて行くんだ!と内心憤慨していました。新天地に行くんだから、通訳も新たな人に代えればいいのに、いやもうアメリカで6年間も生活しているんだから、ある程度英語はできるはずで、通訳なんていらないでしょう!と思ったのです。
水原元通訳の違法賭博とギャンブル依存症が報じられてから、テレビで「ギャンブル依存症は病気だ、誰でもなりうる」という専門医やカウンセラーの言葉をよく聞くようになりましたが、「病気」とはどういう意味で言っているのでしょうか?病気だから、病気になったことはその人の責任ではないという意味でしょうか?また病気なら何をしても(犯罪も)許されるというのでしょうか?意味が分かりません。実は精神疾患で心神喪失や心神耗弱状態だと罪を問えないという司法判断に反対する当事者本人(患者)達がいます。統合失調症、躁鬱病などの精神疾患を患っている患者さん達が皆犯罪行為をするわけではないのに、一人の患者が犯罪行為をすると(その病気の症状による行為だとして免責されることが多く)、その病気を患っている人達皆が犯罪行為をするかのように世間で思われがちですが、それは全くの間違いです。ほとんどの患者さんは犯罪行為をしない弱い繊細な人達なのです。犯罪者と一緒にされないように(犯罪と病気を同一視されないために)患者さん達は、匿名Aではなく実名報道をしてほしいとまで訴えているのです。精神疾患だけでなく、高血圧症や糖尿病、胃潰瘍、癌、パーキンソン病などどんな病気でも、一人一人違い、性格によっても違い、二つと同じものはありません。その人の性格(人格)の上に各病気が乗っかっているのです。統合失調症、躁鬱病、依存症だからと性格的要因を度外視して一括りにして論じるべきではないと考えます。医学書にある症状はいってみればその病気の最小公倍数のようなもので、性格とは別物です。
一方、薬物(覚醒剤、大麻、シンナー、マリファナ など)、アルコール、ギャンブル、ゲームなどによる嗜癖・依存症・中毒といったものは、果たして本当に病気といえるのか、病気とは脳のどこがどうなっていると科学的に断定できなければいけないのですが、まだ分かっていません。(そういうことを長期間したために病的な脳にある場合があります。)それなら「病気」だと言っている人が病巣部位を特定して科学的な原因を指摘して治してみてくださいよ、と言いたいものです。そのくせそう言う専門医やカウンセラーは「治療は一筋縄ではいかないが…」と言って治療にはやや口を濁しがちです。実際薬は効かず、集団療法(同病の人達が集まって吐露し合うNABAや断酒会など)でもなかなか治らないものなのです。依存症というのは、本人が「絶対治す!!」という強い意志をもって臨まなければ治せない、他力本願では無理、自力本願のみが効くものです。だから私は本人以外の人の意向で連れてこられた依存症の人は、治療できません、とお断りしています。本人の意志しか治る道は開けないのです。私は依存症というのは、脳の病気や、後天的な何等かの要因による病気ではなく、元々のその人の依存しやすい意志の弱い(体質のような)性格傾向ゆえに陥る事態であって、同じDNAが引継がれる家系内に見受けられる場合があり、誰でもちょっとしたきっかけでなりうるものではないと考えています。まず意志の強い人はなりません。私の友人にカジノや競馬が大好きな人がいますが、決してのめり込みません。ある程度の所で歯止めをかけてストップできます。程々に楽しんで大儲けまでは望まないのです。依存症になる人は、まず自分の欲と(弱い)意志からその道に一歩を踏み入れたことに責任があるのだから、そこを毅然と反省させるべきなのに、それを「病気」として本人に責任はないかのようにいうのは、さらに甘さを助長させることになるのではないでしょうか。そして嘘・詐欺・窃盗という犯罪までしていたことは、依存症、病気とは全く異なる次元の問題です。依存症の人が皆詐欺や窃盗といった犯罪をするわけではありません。テレビで発言するのであれば、「病気」という言葉で全てが許されるようなニュアンスで話すべきではありません!「病気」という言葉の定義を正しく認識し示した上で使っていただきたいものです。
また依存症の人は、大なり小なり嘘をつきます。本来依存症の人は根は良い人が多いのですが、小心者のため後ろめたさや罪悪感から、嘘で取り繕おうとするのです。また過少申告します。嘘の上塗りが高じて、嘘の達磨になってしまうのです。
真反対に、大谷選手は意志強靭で、常に自分の身を削って自分の限界に挑戦して更に高みを目指そうと真剣勝負をしている人です。自分を鍛えるという努力をせず、時の運で儲けようとする博打などは怠けとして許せないはずです。野球道に邁進してお金に頓着ない人なので、銀行口座に目を向ける習性も暇もなく、絶対的に信用する人に一任していたことは納得できます。しかしその人を見誤り見抜けず騙されたわけですが、今回の件は大いに人生勉強になったことでしょう。
「人の幸と不幸は足して二で割ったら皆同じ」というのが私の持論です。こんなにも今世界で一番輝いている若者が、いつまでもずーっと成功を続けて幸せでいられるのかなあ…、と危惧していましたが、大谷翔平選手の幸と不幸は激的なまでに天国と地獄くらいの振り幅をもって揺れたようです。まだまだこれからも、世界中から羨望と期待の目で注目され、自分と戦い続けなければならない運命を背負って生きていかれるのでしょう。大変だなあ~!! ふと「人並が一番ええ(幸せ)」と言った亡き祖母の言葉が私の脳裏に浮かびました。
2024.4.19.