2023年を想う

 毎年恒例になってしまった感がありますが、今年も年末が差し迫り、どういう年だったのかと考える頃になってしまいました。これも毎年恒例清水寺の今年を表す一文字漢字が「税」と発表されましたが、「?えっ?違うでしょ⁉」とこんなに合わない!と感じた年・字は初めてです。私はこの一年「税」について考えたことは全くありません。何故「税」なのでしょうか?

短い秋〜湯布院の紅葉

短い秋〜湯布院の紅葉

むしろ今年の5月半ばから始まり11月まで続いた「暑」さでしょう!もう冬になったらすっかり忘れてしまったのか、東京の真夏日は90日(つまり一年の1/4が真夏日だったことになり、さらに連続真夏日は64日続いた7/6~9/7)、私の故郷岐阜県多治見市は真夏日101日で過去最高となり、11月初め湯布院~九州山地~高千穂を旅行した時私は半袖姿で、11/5に熊本で30℃を記録し、「本当に冬は来るのだろうか?」と思ったのは私一人ではないでしょう。しかしそのわずか2週間後の11/18日に福岡・九州山地で初雪が降り、あまりに急な気候の変化の為、体調のみならず心にも不調をきたす方が続出しました。紅葉は今一のまま秋はあっという間に過ぎ去り、今は最強寒波が日本列島に到来しています。暑さのせいか今年は薔薇の木にカミキリムシが一度も発生せず無事でした。その消毒で四苦八苦することもありませんでした。私は、今年を象徴する一文字は「暑」だと思います。…あるいは「翔」か…
秋の高千穂峡〜真名井の滝

秋の高千穂峡〜真名井の滝



 今年は日本のWBC優勝の歓喜で始まり、大谷翔平選手ドジャース入りで幕を閉じようとしており、日本人スーパースター大谷翔平選手の活躍と好感度の高い話題に終始していた感があります。侍ジャパンの活躍と漫画のような決勝戦の結末、大谷選手のMLBホームラン王・MVP獲得etc.、7億ドルという破格の契約金に度肝を抜かれました。彼が語った言葉「常に挑戦・チャレンジしたい。昨日できなかったことが今日できた、今年できなかったことが来年できるなど、チャレンジすることが僕の趣味です」は、拙書49章「イチローの引退」で書いた「自分の限界を見ながらちょっと超えていくことを繰り返す…少しずつの積み重ねでしか自分を超えて行けないと思います」というイチローの言葉に重なります。私も昔から心掛けている「自分の能力の限界との厳しいせめぎ合いを続け乗り越えることで少しずつ成長していく」ということとも同じでしょうが、大谷君はそれを悲壮感なく「僕の趣味だ」と軽く楽しそうに言い切ってしまうことに驚かされました。そこが今までの人と全く違い、今世界で最高の超大物である所以だろうと思います。もう我々の時代とは違う世界に入っているんだな、とも感じました。

 そしてまた私は、大谷君と同世代の若者で別分野のスーパースター軍団、大好きなBTSの各メンバーが入隊前ソロ活動で大活躍してくれたことで、今年はずっと頬が緩みっ放しで、幸せ気分の一年でした。期せずして“押し活”をしてしまっていました。

 仕事の方では、昨年末から準備し続けていた二つの学会でのシンポジウム発表とワークショップ発表、長らく停止していた長編の原著論文を書き上げて提出、京大や東大の先生方との精神病理学や哲学・心理学分野に渡る3つのオンライン研究会に参加させていただき、診療後(泳いでから)深夜3~4時頃まで机に向かう日が続くなど、多忙ながらも学問的には充実した一年でした。これもよく考えたら、新型コロナ感染症COVID-19のお陰です。今までなら土曜日診療もあり、名古屋や京都へ駆け付けることは諦めていましたが、遠方まで出向かずともオンラインで研究会に参加できる(新幹線の中でもZOOMを視聴して行きました)世の中になり、長らく大学を離れている私としては、知的な仲間~しかも精神科医だけでなく、物理学者や哲学者、神学者といった様々なジャンルの方々~が増えて、この歳にして学究的な世界に再び足を踏み入れ、頭は若返ったような気がします。最近は人と人の間の空間にある素粒子から理論量子物理学に興味を持ち始め、今月研究会の若い物理学者の案内で京大の湯川(秀樹博士、1949年ノーベル物理学賞受賞)記念館に赴いてきました。高校時代イメージングが全くできない物理が大嫌いで、アインシュタインの相対性理論なんて何のことやら?と思っていましたが、物理学書を読み進める内に、今私が興味を持っている分野に近いものだと知り、身近なものになりました。韓流ドラマも観ますが、物理学や哲学の本を読む今日この頃、勉学意欲は歳をとっても高まるものだと感じています。

 そしてCOVID-19 が続く中気が付いたのですが、「不安、不安」と訴える人達(女性に多い)は、文字・活字を読む習慣が乏しいのではないか、と。感覚や画像だけで反応する日常になってしまっており、文字を介した論理的思考をあまりしていないのではないか、そういう方は新聞からでいいので文字を読む事を始めてみて下さい。表層的な感情だけでなく、思考野の脳神経まで動かすトレーニングが大切で、不安に対して効果があると考え、最近患者さん達にそれを推奨しています。少しずつ効果が上がっている人もいます。

 長年続けてきた競技水泳は、秋に2回400m個人メドレーに出場してもう打ち止めにすることにしました。あまり自分を厳しく追い込まず、来年からは健康のために、海も含めて楽しくマイペースで泳ごうと思っています。

 このところ新型コロナ感染症は少し明けつつあるのか、インフルエンザの大流行とその他の風邪も夏から増え続けており、街中で一旦減ったマスク姿が再び増えてきたような気がします。そういえば、COVID-19が始まった当初は、未知のウイルスによる生死に関わる不安から不安神経症の患者さんや、仕事が激減したためうつ的になる人が増え、在宅ワークで夫がずっと家にいるから三食作らなければならないとか、自分の時間が無くなったと言ってうつ気分を訴える夫人が来院するようになり、“心の科”の患者さんは微増した感がありましたが、在宅ワークやZOOMなどによる会議やオンライン授業が取り入れられて定着し、永遠に解決不能と思われた朝夕の満員電車は乗客が減って解消されパニック障害が減少、終業時間も早まり働き過ぎうつ病が減少、人との接触が減って対人関係で悩む不登校的な学生が減り、手洗い強迫神経の患者さんが「皆が感染対策で手洗いを始めて自分のレベルに降りてきた」と軽症化したためか、COVID-19が減弱してきた今夏以降“心の科”の患者さんはやや減少してきているような気がします。そもそも皆さんあまり外へ出ない生活が続いているのではないでしょうか。しかしここへきて12月師走急に弾けたように忘年会があちらこちらで開催されているようで、夜の帰りの電車は、お酒の入った男性や集団でおしゃべりに花が咲いている女性集団が多々見受けられ、年末の繁忙期ということもあるでしょうが、コロナ前と同様に満員電車のドアに顔と体をくっつけたままの姿勢で私は水泳の練習から帰りました。また以前に戻ってしまうのか…と危惧されます。

 COVID-19が始まって4年になろうとしていますが、世の中は以前には想像もできなかった姿になっています。ロシアのウクライナ侵攻は続いており、アメリカの支援が途絶えたらどうなることか、イスラエルとパレスチナ(ガザ)の紛争、北朝鮮のミサイル乱発射など世界はキナ臭い状況に覆われ、とても海外旅行に興じる気にはなれません。

 来年LAへドジャース大谷君の試合を見に行きたいものですが…、また思いもよらないことが起こるのでしょうか。地球世界に良い事があることを祈ります。
2023.12.22

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