飛んで〇○○に入る夏の蜂

 父の手術が無事終わって、マヤの呪いはもう終わった! と思っていた矢先、今度は一番元気だと思われていた父の弟である叔父が同じ病気と分かり又激震が走りました。その叔父が一旦治療を終えて退院が決まり、私が半年間それを目指して練習に励んできた所属ジムのマスターズ水泳大会直前4日前に、国際プールへ自主練に行きました。最後に飛び込み練習で、思いっきり飛び込み台を蹴って飛び込んだところ、空中で右足のふくらはぎが攣って石製の打ち出の小槌のように固まってプールの底に沈んでしまいました。周りにいた人達に引き上げられたのですが、石の小槌のようになっている私の右ふくらはぎはしばらく回復せず動けませんでした。「今回は大会前に怪我しませんでした!」と言えるな、と思っていた私は「またやってしまった! いや、これはきっと夢だ!」と言い聞かせましたが、現実でした。翌日も痛みは引かず、肉離れに近い酷いこむら返りで、まともに歩けない私は、トレーナーさんのところで鍼を打ってもらい、大会まで安静!と言われましたが、大会に出られるか微妙な状態でした。その日の夜、泳げない私は振り込みのために駅前のローソンへ入ってレジへ直行し振り込み用紙とお札を出した直後、突然雷が落ちたのか?と思うほど凄まじい轟音が私の右耳に轟(とどろ)きました。「え?ギャー!」と叫ぶ私に店員はキョトンとしています。その後針を刺すような複数回の痛みが私の耳の中に走り、「ギャー!、痛い!痛い!痛い!」と右耳を抑えて連呼する自分自身に驚きながら、一体何が自分の耳の中で起こっているのか全く分からず、コンビニの中の客達は「可笑しな人がいるなあ」という顔で見ています。どうやら私の他のどこにも当たらず右耳の穴にストレートに直入した小さな動く生き物は入った向きで身動きできず、焦った生き物はどんどん私の耳の奥前方深くへ突き進んでもがいているようでした。虫!?しかもかなりの疝痛、何度も何か鋭い刃で頻回に刺すような痛みが波のように繰り返し、もんどり打っている私にようやく異常事態だと気付いた店員が綿棒を持ってきてくれました。それは全く届かず、光を当てると良いと助言してくれたお客さんがいたので、店員が携帯電話の光を当てるも、全く効果なく、私は「これ以上奥に進んで鼓膜を破らないで!泳げなくなっちゃう!」と叫ぶように祈りました。次に水攻めを試みようと店の中の水道の蛇口から耳の中に水を入れ続けましたが、一旦は治まるものの、水が引くとまた中の虫は暴れ出し、痛みは続きだんだん手足が痺れてきました。店員が救急車を呼んでくれたので、救急車に移動し中で吸引してもらいましたが、隊員は「何か黒いものが見える」と言うだけで、一向に出て来ず、もう大学病院の救急外来へ行こう!ということになりサイレンを鳴らして走り出しました。救急車の中ではもう死んだのか?と思うくらい静かにしていた中の輩は、病院入り口の段差の衝撃で再び暴れ出し、私は悲鳴を上げながら四肢麻痺した状態で救急外来へ運び込まれました。そして耳鼻科医が診察に来て「まずゼリーで虫を殺します。」と言って私の右耳に麻酔のゼリーを入れました。20~30分間私は外来のストレッチャーの上に放置され、その後医者が吸引を試みましたが、ゼリーだけ吸引され虫は全く出てきません。耳鏡でつついて引っ張り出そうした医者は「黄色と黒の縞々が見えます!」と言いました。蜂だ!やはりあの痛みは蜂だったのか!!再び私はショックを受けましたが、「いやもう死んでいるので、何とか取り出しますから力を抜いてください。」と医者。足1本、2本、羽根1枚、2枚、原型をとどめない虫のお尻らしき部分が一つ一つ分解されて取り出され、耳鏡と先の尖った金属製の耳かきのようなものでつつかれまくっている私は必死に痛みをこらえますが、どうしても力が入ってしまいます。四苦八苦していた医者は「ここが大事ですから!」と言って最後の力を振り絞って、私の外耳道の壁に爪を立ててへばりついていたらしき虫の頭と両手のついた胴体を引っ張り出し、何とか無事虫の異物は私の右耳から全部取り出されました。全ての行程に約2時間かかりました。「こんなこと50年以上生きていて初めて!」と言うと医者は「この時期増えるんですよ、耳に虫が入っちゃた人。2週間前来たおばあちゃんも『82年生きてきてこんなこと初めて!』って言いました。こういう時はオリーブオイルを入れるといいですよ。」と教えてくれました。精根尽き果て全身が痺れていた私は、手先足先に少し感覚が戻り動かせるようになってから何とか立ち上がり、タクシー乗り場まで歩いて一人で帰ってきました。翌日近くの耳鼻科へ行って右耳を診てもらいましたが、「外耳道傷だらけですよ!」と言われ抗生物質を塗ってもらったものの、前夜の騒動で心身共に疲れ果てて全く意欲がわかず、二日後の水泳の大会は。当日朝まで右ふくらはぎをアイシングし、右耳が薬でポーンと詰まったままの状態で出場したのですが、結果は当然散々でした。
 どうしてこうも滅多にない(遭遇する確率の低い)悲劇に見舞われ続けるのだろうか?と落胆し呆れる私は、今後隕石が頭の上に落ちてきても驚かないような気がしました。
 「飛んで火に入る夏の虫」ならぬ「飛んで私の耳に入る夏の蜂」事件でした。
2016.8.3.

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