カンクン旅行

 この夏、初めて中米の地と海を訪れました。メキシコのカンクンへの母娘旅行です。当初は、カリブ海のコスメルとマヤ民族の神の泉セノーテでダイビングすることが目的でしたが、最少催行人数に達せず、ジンベイ・シュノーケリングとセノーテ・シュノーケリングに変更せざるを得なくなりました。アエロ・メヒコという航空会社も初めて利用するので、やや緊張して乗り込みました。しかしボーイング787の飛行機内の空気はとても人に優しく、乾燥せず肌やのど・鼻に快適でした。機長の飛行技術もとてもレベルが高い!と感じました。15時間ほどでメキシコシティーへ直行、1時間半のトランジットの後2時間半でカンクンに到着しました。着いた瞬間口を突いて出てきた言葉は「あ~、日本の方が暑いわ!」でした。猛暑の日本より風が爽やかで陽の光も優しく感じました。

 カンクンを拠点にして、ユカタン半島の古代マヤ文明の巨大遺跡チチェン・イツァとトゥルム、セノーテを回りました。マヤ文明は、紀元前3世紀から12世紀にかけて繁栄した後忽然と姿を消したといわれています。天文学(暦)、建築学に優れ、そのミステリアスな信仰と神話など、ガイドさんの話を聞いているうちにどんどん引き込まれていきました。その中でも、神への生贄として生きたまま幼い子供の心臓を取り出して捧げたとか、蹴鞠のような球技で、勝った方のキャプテンが強いものの証として生贄として喜んで捧げられたなどの話は、過去のそういう事実があったその地にいて聞くためか、体の奥深く心(しん)の臓(ぞう)に染み入ってくるような不思議な感覚でした。日中の真夏の日差しの中遺跡巡りを終えて、神秘の泉グラン・セノーテへ。ユカタン半島は大きな山や川がなく、石灰岩の大地の下に濾されてできた迷路のような真水の路が繋がっていて、その天然の井戸のような泉=セノーテは、大昔からマヤ族の大切な生活用水・真水の供給源であり、宗教的に大きな意味を持っていたと考えられています。透明度がとても高く、深い所では30m程のケーブ(洞窟)ダイビングもできるのです。しかし真っ暗な淡水の洞窟の中を潜って進み、頭上の鍾乳石の岩などにダイビング機材が引っ掛かった客に巻き込まれて、ベテランダイバーでも亡くなることがよくあるとの事を現地で聞き、セノーテ・シュノーケリングに変更して良かった!と思いました。確かに水は綺麗で、洞窟深く潜っているダイバーの懐中電灯の光が水面からも見え、とても幻想的でしたが、「どこかであの生贄を捨てたチチェン・イツァの聖なる泉と繋がっているの!?」と思うと、少し背中が冷たくなる気がして、一人で遠くまで楽しく泳ぐことはできませんでした。

 もう1日、折しも日本の沿岸でサメが多数出没し遊泳禁止となるところが多かった時期ですが、何年か前にジンベイザメ目的でタイへ行って全く遭遇できなかったリベンジとして、カンクンから東へ1時間くらいのカリブ海(もうキューバが目と鼻の先の海域)に夏季、多い時は200頭ほど野生のジンベイが現れると聞き、シュノーケリングに行くことにしたのです。ジンベイザメというのは体長10m以上の世界最大の魚ですがとても大人しく、人を襲うことはありません。目的の海域に到着すると、次から次へとジンベイザメに遭遇し、人間の合間を縫うように真横まで来て、丸でザトウクジラのような体で悠々と泳いでくれました。その巨体に圧倒されながら、フィンを蹴って必死に追いかけましたが、最後は体を大きく翻して去って行ってしまいました。私は船と波とジンベイ酔いをしてしまい、念願のジンベイザメとのアイコンタクトは取れませんでした。

 メキシコ・カンクンのホテルはとても綺麗な高級リゾートですが、それ以外ではトイレのドアの鍵は日本の昭和の鍵フック型で、使用した紙は流さず屑籠に入れる方式でした。日本のTOTOがメキシコに行けばかなり儲けられるのではないか?と思いましたが、石灰岩とセノーテの特殊な地形上、先進国型の水洗設備は作れないのかも知れません。

 また道路を走っている車に注目すると、日本製の車はホテルやツアー送迎用の小型バスのような車はトヨタのものが多かったのですが、他には?とメキシコ人の運転手に聞くと、「ツル!」と返ってきました。「何のことだろう?」と思って走行しているその車を指さしてもらうと、なんと!30年くらい前の日産サニーではありませんか?「あれはサニーですよ。」というと、メキシコには大きな日産の工場があって、昔からタクシーはTSUTUなんだと言います。TSURU???確かにその車はいっぱい走っていてほとんどがタクシーで、テールランプの横にはTSUTUというエンブレムが付いています。理由を聞くと、最初にこの車のネーミングを考える時、メキシコ人は日本のイメージというと、「富士山の横に鶴が飛んでいる」絵図だったそうで、その鶴からTSUTUと名付けられたんだそうです。なるほど!でも車の中で、メキシコ人ドライバーがサニーを見つけては「TSUTU! TSUTU!」と連発している姿は、何やら滑稽で笑えてきました。

 因みにカンクンでは日本人も少ないのですが、あの世界中どこにでもいるイメージの中国人が全く見当たりませんでした。街中の看板や外来語の訳語もアジア系では日本語だけで、中国語は全くなし!中国ではカンクンはまだ知られていないのか?とさえ思いました。
お隣のキューバと中国は1960年以来革命を通して強い国交が気付かれているのに…?

 料理はメキシコ料理とイタリア料理が多かったのですが、一つとても美味しい日本料理店に出会いました。「花いち」という寿司と麺が主体の日本料理ですが、ランゴスタ御膳といって夏季限定で取れる ロブスター=ランゴスタ 尽くしの日本にはないメキシコならではのコースです。ロブスターの酢の物、ロブスターの天婦羅、ロブスター寿司、ロブスターの刺身、ロブスター味噌汁など、世界中あちこちで日本料理は食してみましたが、パリよりハワイより美味しい日本料理・寿司店で、カンクンでも高級料理店として有名でした。また、そこで食べている外国人たちの箸さばきもなかなか上手く、子供たちもちゃんと二本の箸を使って食べていました。世界遺産となった和食は確かに世界中に広まっているようです。ディナークルーズとしてカリブの海賊ツアーにも参加しましたが、日本人は我々二人だけで、娘は日本人代表として壇上に上げられ、300人以上の多国籍乗組客の前で日本語を教える役に抜擢され片言の英語で頑張りました。最後にフック船長から「beautiful Japanese lady!」と声掛けられ、日本に優しい国だなあ~と感じました。
取りあえず無事にメキシコ・カンクンから帰ってこのエッセイを書き始めた矢先、カンクンでタクシーに頭をぶつけ首が鞭打ち症のようになってきて、それがほぼ治った頃に飼い犬に右手を噛まれて使用不能となり、娘が食中毒で入院!と立て続けに災難に見舞われ、この紀行文が遅れてしましました。旅行後もずっと何やらマヤの神秘的な余韻に包まれながらいつもの生活をしているような気分だった私は、「もしかしたら連続する災いは、余韻の中に残るマヤの呪いのせいではないのか? 生贄の泉を写真に撮ってきてしまい、そこで買ったマヤの円盤状のカレンダーが災いの元なのではないか?」と考え、写真とカレンダーを近くの神社に奉納してきました。その後災いらしきことは起こっていません。精神医学とスピリチュアルとは別物ですが、アフリカにはまだ医学よりもシャーマニズムの方が信じられている所があります。現代でも科学的なものより目に見えない精神性の方が優位なことがあるのかも知れません。

 初めての神秘的な中米旅行を終えて思うこと~文化や歴史は違っても、マヤ民族の黄色人種で四角い顔や首が短くてずんぐりむっくりした体型は、同じ環太平洋のネイティブアメリカン、ペルー・インカ、エスキモー、アイヌ、(日本)と似通っていると思われます。大昔は太平洋の周りは地続きだったんでしょうね。何やら不思議な縁(えにし)を感じました。次に機会があったら、南アメリカへも行ってみたいなと思います。
2015.10.12

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