アメリカの対極

 このGWは15年来の念願だったグランドサークルを巡る旅を敢行してきました。グランドサークルとは、アメリカ合衆国南西部のアリゾナ州とユタ州にまたがる半径約230㎞の円内地域をいい、太古からの神秘的な奇岩やダイナミックな景観など、むき出しの地球を見ることができ、古代先住民の遺跡及びそのネイティブアメリカン最大のナバホ族の居留地が含まれてもいます。国立公園や州立公園、世界遺産なども数多く、今回はラスベガスからグランドキャニオン~モニュメントバレー~アンテロープキャニオン~ホースシューベントを車で回ることにしました。いつも海ばかり行っている私にとって、浮力に頼らず重力と戦わねばならない山の行程は、やや不安を伴うものでした。

グランドキャニオン

 東京の辰巳国際水泳場でマスターズの4レースに出場してほとんど一日中プールで過ごした日の深夜便で羽田から飛び立った私は、着いた朝ラスベガスを出発した車中ひたすら眠っていました。目が覚めるとそこは別世界!人間の歴史よりはるかに長い時間をかけてコロラド川が研ぎ澄ました赤茶けた奇岩の壁、地球の大きな地殻変動と風雨による浸食などの大自然が作り出した驚異の光景グランドキャニオンが目の前に広がっていました。その長さは446㎞(東京~米原に相当)、幅は13~26㎞、深さは1600mと雄大で、日没の夕陽と日の出の朝陽に照らされキャニオンの凹凸が刻々と異なる色合い・表情を見せる様を気温1℃の寒さに耐えながら鑑賞・感動し、本当にいつか誰かが言った「ここに立つと、今まで自分が悩んできた諸事が、何とちっぽけなことだったのか!と思える。」という言葉が自然と脳裏に浮かびました。

モニュメントバレー

 様々なポイントからグランドキャニオンを鑑賞した後、アメリカの原風景と言われるモニュメントバレーへ移動しました。数々の映画のロケ地となった巨大なビュート(赤い岩の残丘)が静寂な中整然と立ち並ぶネイティブアメリカン最大のナバホ族の居留地です。そこには今も電気や水道といった文明の利器に頼らない伝統的な生活を続けている7家族がいるとのことで、そのナバホのガイドさんの案内の元、未舗装の赤土(一部砂漠)の凹凸道を車で進みました。色々な形の巨大なビュートを様々な角度から眺め、夕陽・朝日に照らされ浮かぶビュートの雄々しい姿を静かに鑑賞し、「ホーガン」と呼ばれる木を円錐形に組みその上に赤土をお椀型に固めた「かまくら」のような家(入口は太陽が昇る方向に開けられている)で昔ながらの暮らしをするナバホの人々の地を巡るうちに、その自然と調和しながら生き続ける人々の謙虚さに染まったのか、私もいつしか敬虔な気持ちになっていました。

アンテロープキャニオン

 最後の日はナバホ居留地にあるもう一つの、そして今回の私の旅の最大の目的であるアンテロ―プキャニオン(アッパー、ロウアー)へ。水流と風が長い年月をかけてらせん状に刻んだ赤土砂漠の地下洞窟で、深さ36m、幅2~3mの亀裂の内、太陽の光はわずかしか差し込まず、その光が赤~ピンク~紫色の砂岩(陶器の素焼のよう!)の水流模様の壁に反射して美しい色のグラデーションが浮かび上がります。砂を含んだ光のビームと岩のドレープが幾重にも折り重なって、神々しいまでの幻想的な大自然の造形美に酔いしれながら、何度も立ち止り見上げシャッターを切り、聖堂のような洞窟探検を感動の連続のまま地上に出ました。ここもナバホのガイドさん付きでないと入れない神聖な場所です。

ホースシューベント

 最後に、コロラド川が侵食した馬蹄形型の断崖絶壁ホースシューベンドを見て、もっとこの地に居続けたい!という後ろ髪を引かれる想いを抱きながら帰路につきました。海とはまた違う地上の、地球自然の原風景に圧倒され続けた1600㎞に及ぶ私の旅は、予想をはるかに上回る感動で心満たされ、ナバホ族の人々が今も太陽・地球・自然と共に生きている姿に、海で学んだ地球に沿う生き方と共通するものを感じ、その大切さを再確認しました。

ラスベガスの街

 車は6時間走って夜、一転して超人工的な物・事の権化のような街ラスベガスへ帰還しました。人間の欲の坩堝(るつぼ)のような24時間眠らない街ラスベガス。カジノや巨大な超高級ホテル群と世界中の超一流人気ブランドが名を連ねる巨大ショッピングモール、エンターテイメントショーや世界中のグルメダイニング、とにかくアメリカは何でもデカイ!数時間前の風景との落差が大きすぎてめまいしそうな私に追い打ちをかけるように、チェックインした某有名超一流Bホテルで、何と!1泊30~50万円もしそうな250㎡位のスイートルームに案内されたのです!何かの間違いではないか?と思いフロントに電話し、「こんな広い部屋は怖いので、もっと小さい小さい部屋に変えて下さい!」と懇願、先程までいたナバホ・ネイションのホーガンで十分な気分でいる私なのに、「今晩はそこしか空いていないから。」と却下され、夢の中~まるでハリウッド映画の中に入らされたような気分でした。物欲がほとんどない今の私に、ラスベガスの街は「無駄な人工物の巨大集積場!」としか映らず、豪華な広すぎる部屋、週末で一晩中賑わうメインストリートの喧騒、救急車やパトカーのサイレンでほとんど眠れませんでした。シルクドソレイユのOのショーを見ましたが、日頃水泳と筋トレを続けている私には、内村航平君がいっぱい!とシンクロナイズドスイミング&飛び込みにしか見えず、ダンサーの筋肉や関節ばかりに目が行き、「あの筋肉はどうやったらできるんだろう?」とか「あの関節はどうなっているんだろう?」と思いながら見ていたので、やや興醒めの鑑賞でした。また、地上旅行のため4日間泳いでいない私は、禁断症状のようにたまらず練習!と競泳用水着とゴーグル・キャップを持参してホテル中庭に配置された5個のリゾートプールへ駆け付けたのですが、朝から集う世界中の宿泊客の中ちゃんと水泳している人はおらず、ビキニにサングラスをかけて胸辺りまでしか水につからず、多くはプールサイドでお昼寝・読書・シャンパン片手のセレブ達でした。しかしここまで来たから!と意を決して(さすがにディズニーのピンクのキャップは被りませんでしたが)一番長い(といっても15mくらい)プールの壁沿いを5往復して切り上げました。アップにもならず…。

 この人間のあらゆる物欲が詰まったラスベガスの街と、地球・自然と調和して生きるナバホ族居留地、この二つのアメリカの対極を見た旅でした。5年くらい前までは私もラスベガス派だったのですが、最近はすっかりナバホ化していました。何がきっかけでそうなったのか?しかし今の方が断然楽に生きられています。最近の精神医療でも、精神病より、うつ状態や神経症から人生相談的なことの方が増えています。それはどこかしら欲が満たされずに嘆いて来院する人々のような気がします。アングロアメリカンがアメリカ大陸の西部開拓を始めた侵略欲により、ネイティブアメリカンの人々は先祖代々受け継がれてきた豊かな土地を追われ、高地砂漠地帯と呼ばれる不毛の土地・居留地に押し込められたのですが、図らずもそこには膨大な量の石油が埋蔵されていることがわかり、多くの観光資源と共に「宝の山」と化すことになったのです。日本も明治以来の西洋化、戦後の高度経済成長、バブル時代とその崩壊を経て、americanize~globalizationが進み、白人同様欲を満たそうとする傾向が強くなったのではないでしょうか?しかも一人一人自己意識が強くなり、それは良い一面もありますが、その欲が満たされないと苦しみ嘆き来院するという構図が考えられます。ナバホの人々から学んだ謙虚さから、欲を捨ててあるいは減らして、あるがままの自分を受け入れつつ自然と調和して生きること、そうすることで楽に生きられ、医療のお世話にならずに済む人が増えるのではないでしょうか。今回は海ではなく地面からですが、同様に自然・地球・太陽・人間についてまた多くのことを感じ学んだ心洗われる旅でした。
2014年5月

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