2020令和2年とは…
今年もあと一か月を残すのみとなりましたが、西暦2020年令和2年は、東京オリンピックも延期され、世界中がほぼCOVID-19で覆い尽くされてしまった感があります。
6月に入り新型コロナウイルスの感染者数が減ってきて第一波が収束しつつあると判断したのか、当時官房長官だった現菅総理大臣の目玉政策というGo toトラベル事業が7月から開始されることになり、夏には感染者が減る(高温・多湿・多い日照量~現在東大のチームが紫外線の影響を研究中)と予想していたのに、致死率こそ下がったものの、感染者数は再び一気に増え始め第二波へ突入、ついにウイルスの増殖に好条件となる“寒さと乾燥”の冬が到来し第三波に入ってしまいました。この段になっても政府(菅総理)は経済を衰退させないためにと、Go to キャンペーン(トラベル・イート・イベント)を継続し続け、人間の命より経済を優先させる方針を変えず、強い危機感を持つ医療関係者は憤然としていました。ようやく11月22日政府は方針を転換しGo to トラベルを見直すと表明しましたが、「時既に遅し!」です。一旦私も胸を撫で下ろしましたが、政府の方針は混迷を極めており、その決断力の無さを露呈しています。政府は自らが始めた政策の責任を地方自治体に丸投げし、菅総理は「(Go to トラベルが感染者数を増加させた)エビデンスを出せ!」と宣(のたま)う始末!“エビデンス”とは「科学的根拠・証明」という意味ですが、今年7月に自分が思いついて開始したばかりのオリジナル政策と感染確率との関係をこの短期間でだれが研究しているというのでしょうか?苦し紛れの言い逃れとしか聞こえません。エビデンスに基づいた医学が医学の全てではありません。演繹法といって、次々に諸事象から推論していって一つの結論を導き出す手法も立派な科学的方法で、医学のほとんどがまず諸症状から病気を推定するというこの手法を取っており、検査はその確認作業にすぎません。国内の新規感染者数の推移グラフから、Go to トラベルを開始した7月下旬感染者数は急増して第二波へ突入し、除外していた東京を追加した10月以降再び感染者が増え始め第三波に繋がっていることは一目瞭然です。政府は経済と感染対策の両立を声高に叫んでいますが、人の命があってこその経済であり、前章で「戦争時と同じだ!」と言った父のことを書きましたが、戦時中まず皆生き延びるためだけに必死だった時、「経済!経済!」と言っていた人はいるのでしょうか。なのに7月まだ感染者が減少し切っていない段階で、「安いよ!お得だよ!」と美味しそうな餌をぶら下げて国民の欲望を煽るGo to キャンペーンを政府が始めてしまったことで、「ああ、もういいんだ」と国民の新型コロナウイルスへの恐怖心や自粛の緊張感は緩み、特に若者達の新型コロナウイルス軽視傾向を生んだように思われます。安いから!と一ヶ月に4回以上各地へ旅行に出かけたオンライン授業中の大学生もいます。まずは一旦感染を減少傾向に抑え込まなければ、経済再生も成り立たないではないか!政治家とは、命・医療から本当に距離のある人達なんだなあ、と実感させられました。
またその間、7月に今が旬の俳優H.Mさん、9月には好感度女優Y.T.さんetc.が突然自殺するというショッキングなニュースが続きました。私も好感を持っていた方達なので、〈どうして?〉と職業柄考え込んでしまいました。繊細な感情表現が本業であり、虚像と自分の実像との狭間で揺れ動く俳優・アーチストの心理に、このコロナ禍がどう影響したのかor関係ないのか、詳細は全く不明ですが、またそれに続く“ウェルテル効果”(マスメディアによる有名人の自殺報道に影響されて自殺者が増える現象)なのか、今年自殺者(特に若者)が激増していることも看過できません。自殺はある程度エネルギーがなければできないもので、単に<うつ病>だけでは済まされず、もし一瞬の心の隙間と勢いでしてしまったのだったら、今頃彼らは後悔しているのではないでしょうか?
この新型コロナウイルスなるものは、ダーウィンの進化論“強い者だけが生き残り、弱い者は淘汰される”(自然淘汰)の通り、地球上に増殖してのさばり過ぎた人間=ホモサピエンスを、身体的に(ウイルスに)弱い者、及び精神的に(それに関連した自殺など)弱い者を、篩(ふるい)にかけて減らそうとしているような気がしてきました。だから身体的にも精神的にも強くないと生き残れないんだ!と心しなければいけないでしょう。苦しいけれど、戦争・バブル崩壊・リーマンショック・地震水害などを乗り越えてきたように、今少し皆で踏ん張りましょう!
私は、Go to トラベル政策に抗議するべく、7月に予定していた恒例の西表島へのダイビングは一早くキャンセルし、築21年目に入った我が家の庭のウッドデッキが娘の一踏みで崩壊したため、オリンピック休みにしていた猛暑の夏休みをウッドデッキと庭の改修工事に充てて過ごしました。80歳現役の基礎工事の職人さんが暑さにバテ気味だったので、私が代わって砂利運びに精を出し自宅筋トレに励みました。おかげで私は、どこも遊びに行っていないのに背中や肩がこんがり日焼けして、秋まで皆に「どこ行ってきたの?」と言われました。出来上がった塀と床が一体化したブラジルのイペ材でできた堅~い良い木の香りがするウッドデッキと私お手製の庭は、隣家の壁に挟まれた13畳程のパティオ(中庭)のような居心地の良いパーソナル空間となりました。天気の良い日は三食パラソルを開いて外テーブルで食べ、毎朝若草色のソファー付き籐のローチェアーで庭の木々を見上げながらコーヒーを飲み、ヨガマットを敷いて朝ヨガをし、夜は星と月を眺めながらワインを傾けることが日課となりました。オンライン学会も三日間そこで聞いて過ごしました。どこにも(海外・国内旅行、買い物や外食にも)行かなくても、家の中で一番のお気に入り空間となったパティオで、太陽の下(もと)外気をいっぱい吸って一日の多くの時間を過ごしながら、“ステイホーム生活”を満喫しております。
このコロナ禍により、クリニックの患者さん達にも今までとは違う変化が起こってきました。前章に書いた“コロナ不安”、“在宅ワーク不適応症候群”、パニック障害の減少や不潔恐怖の軽快に加えて、オンライン授業により登校できず友達に会えない閉塞感や大量の課題に苦しむ学生、終日家族が在宅するため家事に追われ不満爆発する主婦、高齢者施設に預けた親に面会できないで苦悩する人、休校期間に自宅で自主勉強する内に学校で授業を受ける必要がないと気付いてしまった休校空け不登校の成績上位学生、オンライン会議や授業でZoomから皆に見られている!緊張してしまう会社員や学生など、心の病像は今年急速に変化している印象です。
春手作りマスクを量産し、夏前にはクリニック入口に網戸を設置、対面時のアクリル製衝立も手作りした後、秋からは空気清浄機・加湿器を入れ、抗菌スリッパに新調したり受付窓口を塗替え修繕したり、と新型コロナウイルス感染症対策に奔走、神経難病と認知症の進む母の介護の合間を縫って日課の水泳・筋トレ・ヨガに通っているうちに、あっという間に年末を迎えることになっていました。
11月21~23日の3連休、患者さん達の話から京都や箱根などの観光地はとんでもない数の人が出ることが予想できていました。我が家は娘の結婚一周年のお礼参りに神社にだけ行きましたが、やはりそこも七五三の家族連れで賑わっており、行き帰りの高速道路は終日大渋滞していました。京都の嵐山は地元民が出歩けないほど日本人の(例年の外国人はいなくなった)観光客でごった返し、京都駅は大混雑で恐ろしい光景だったとの事です。これではまた1~2週間後新型コロナウイルスの感染者数が爆発的に増加することでしょう。さらに、この冬12月~2月にかけて高齢者の感染死亡者数が激増することが大変懸念されます。
果たしてこの年末正月は無事迎えられるのでしょうか?
(2020.11.25.)