新型コロナウイル感染症COVID-19の到来

 令和2年の幕開け後間もなく、患者さんの診察を通して{今年は、咳が目立つ気管支系のどこかいつもと違う変な風邪が流行りつつあるなあ…?}と感じていたところ、1月末中国の武漢市から得体の知れない恐ろしい(感染力が強く死者数の多い)ウイルスの爆発的感染の報が入り、あっという間に世界中に広がって、人類は地球規模で未曽有の健康危機的状況に陥りました。従来のコロナウイルスの一部が変異した新型コロナウイルスで、COVID-19 と名付けられましたが、正体不明・未知のウイルスなので、有効な薬や対策もなく、誰にも今後の予想がつきません。世界中の旅行者で潤っていた日本にも、ダイヤモンド・プリンセス号の感染から徐々に市中感染が広がり、3月11日WHOがパンデミック宣言を出して以降、日本から外国人が消えました。全ての学校が休校となり、会社も時差出勤や在宅テレワークが増え、4月7日緊急事態宣言と共に外出自粛・3密を避ける生活様式を奨励され、以降国内の経済社会活動は全国的にほぼ停止状態となりました。人と人の間も距離を取るようsocial distance指示され、家から出ないようstay home 家族でずっと蟄居生活を強いられました。街はゴースト化し、社会全体がフリーズしたのです。20200601-3
 常々私は「明日何が起こるか分からない。今日がずっと続かいないことだけは確かだ。明日以降は予測不能に変わる、そう思って生きなければいけない!」と言ってきましたが、多くの方が「この日本で今時何馬鹿な事言ってんの!?」と唖然とされたと思います。が今回は、小池百合子東京都知事の発言にもあったように「毎日ド級の変化があって、明日何が起こるかどう変化するか分からない世の中になってしまった」ため、「先生の言うことがようやく分かりました。こういうことだったんですね」と多くの患者さんに言われました。そうなんです!明日自分が感染するかも知れない、明日家族や友達が死ぬかも知れない、と今より先は大きな壁が立ちはだかって予測不可能な世の中になったのです。現代人、特に日本人は第2次世界大戦後、徐々に復興を遂げ高度経済成長後バブル期も過ごし、幸いにも危機的状況なく75年過ごしてきました。国民の生活に余裕ができ、幸せを求め欲を満たすためにどんどん享楽的になってきた感があります。 
 COVID-19感染者及びその死者数がどんどん増え、家から出られない生活が続いていたある日、86歳の父が「今のこの状況は、あの太平洋戦争で焼け野原になった東京の風景と全く同じだ!」と言い放ちました。「でもまだ今の方がましだ、食べ物も家もあるじゃないか。人間100年位生きていたら一度位はこういう事態には遭遇するものだ。日本は戦後平和ボケし過ぎてきた。」と。
 25年ほど前、静岡の日本平という地に家を建てようかと思って、父を連れて土地を見に行ったところ、茶畑の中に立って四方を見回した父は「う~ん、ここなら飢え死にしない!ここにしろ!」と唐突に言いました。私はその前時代的な発言に唖然として「飢え死に?今時何言ってんの?」と嘲笑交じりに言うと、「ここなら陸からも海からも空からも物や食料が入って来るから、危機的状況になっても生き延びられる!」と真顔で父は進言するのでした。その後2009年新型インフルエンザが登場した時、その時父を馬鹿にした自分を恥ずかしく思いました。大学で学んだ細菌学の知識から、一時期大流行して世界を震撼させたエイズや新型インフルエンザなどのウイルスが、もしかしたら人間ホモ・サピエンスを滅ぼすのではないか?との恐れを一瞬抱いたからです。やはり戦争を体験した人は凄い!
 ≪恐竜⇒ネアンデルタール人⇒ホモ・サピエンス⇒?≫ と次に来るのは…?
 地球は、巨大で強いものが、より小さくて弱いものに負けて支配者が変わるという歴史を繰り返しています。何故小さく弱いものが大きくて強いものに勝つのか?それは数で圧倒して勝つのです。従って次に人間に勝つものは、より小さいながら圧倒的に数が多いもの、それは細菌やウイルスかも?と思った医者は私だけではないでしょう。ちょうど私は今年に入り、『サピエンス全史』で世界的ベストセラー作家になった今を時めく知の巨匠イスラエル人歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の第2弾『ホモ・デウス』を読んでいました。ハラリ氏は、その中で「人類は歴史上太古の昔から、飢饉・疫病・戦争という3つの問題との戦いを繰り返してきたが、ここ数十年首尾よく抑え込んできて、対処可能な課題に変わった。」と論じています。が、そうはどっこい!まだ新型コロナがいた!ということです。私も昨年発刊したエッセイ集「徒然花」の最終章で、「今後はAIとの戦いか」と書きましたが、新型インフルエンザやエイズを克服した人類は、もう未知のウイルスに恐れおののく必要はなくなったのかも?と少々ウイルスを見くびっていました。
 中国の武漢市から~ウイルス研究所からなのかコウモリや蛇が運んできたのか分かりませんが~このような感染力の強い、人と人の間(人間(ジンカン))という絶妙な空間を狙って増殖する(ずる)賢く恐ろしいウイルスが突如地球上に現れたのは、~人間とウイルスは、人間が古代から進化してきたように、ウイルスも人間が制圧するとさらに微小変異を起こして進化するという“イタチゴッコ”を繰り返してきています~人間が自分たちの社会経済発展のために利己的に地球上の自然破壊を繰り返してきた功罪なのではないかと思えてなりません。つまり地球を傷つけるような過度なエネルギー資源の開発や環境汚染により、地球温暖化や異常気象(地震・津波・大風等の頻発)といった自然現象の激変が起こり、更には地球の生態学的平衡に揺るぎが生じて、最小の微生物であるウイルスにホモ・サピエンスの想像を遥かに超えた稀有な変異が起こったのではないかと。
 今や人間同士殺し合いや経済戦争をしている場合ではなく、各国さらには日本なら各県単位で封鎖的に対処することで精一杯な状況です。世界中の英知を出し合って必死にワクチンや治療薬の開発が行われていますが、まだ有効なものが出てきていません。全世界全人類を震撼させfreezeさせたCOVID-19は、人類の世界を一気に変えました。人々から享楽的な楽しみを奪い、人-物-金の流れを止め、企業・経済をも崩壊させつつあります。私は今年、虫の知らせか{もう暫く旅行はいいや}と海外旅行の計画は全くしていなかったので支障ありませんが、5月末に予定していた娘の結婚披露宴が吹っ飛びました。しかし、あの何を以ってしても解消不能だった殺人的な朝夕の満員電車問題を奇跡のように一気に解決し、家にいないことが当たり前の父親かつ家事育児より仕事の方を優先させて社会に出ていくようになった母親を家庭に連れ戻しました。一日中家族揃って家で3食を摂りながら過ごし、公園は家族連れで賑わい、家族で庭いじりや散歩をする等、古き良き時代の家族の光景を蘇らせました。これもまた新型コロナウイルスの凄い力です!20200601-2
 感染が拡大し始めた当初は、クリニックには明日以降が分からない“コロナ不安”を訴えて来院する患者さんが多く見受けられましたが、5月に入り、その方達も「もう諦めました」「もう慣れました」と落ち着いてきました。一方、いじめや不登校で悩んでいた子供や仕事内容や人間関係が原因で出社拒否症になっていた人達は、3月以降休校や在宅ワークになって学校や会社に行かなくてもよくなると、ニコニコ顔になりすっかり治ってしまいました。また満員電車や人混みで不安発作を起こすパニック障害も、テレワーク・在宅勤務やソーシャルディスタンスの奨励で電車や街の混雑が一掃され、ほとんどなくなりました。
また、手洗い習慣の奨励やステイホーム・外出自粛により、不潔恐怖・手洗強迫の患者さんや引きこもり状態だった人は「世の中の人が皆自分レベルに降りてきたので、自分が目立たなくなった」と気が楽になり軽快しました。
 しかし5月連休明け頃から、「周りに家族がいると、公私の切り替えができず仕事に集中できない」「家での一人での仕事だと、分からないことをすぐ人に聞けなくて仕事が進まない」「ちょっとした雑談もできず息抜きができない」と言い、仕事の能率が落ちて自己評価が下がり、どんどん気分が落ち込んでいく“在宅ワーク不適応”といえるような患者さんが増えてきました。
 新型コロナウイルスは、人と人の間の空気に巧妙に巣喰い、ソーシャルディスタンスを取らせることにより、人と人の間のやり取りが好きで得意な人(対人距離が近い人)にはこの事態は悪×、人と人の間の空気が嫌いで苦手な人(対人距離が遠い人)にはこの事態は良〇、という現象を起こしました。
 私の仕事は、この人と人の間の空気(顔色、表情、声のトーンetc.)を大事な診察道具として心を診る医療なので、この空気を排除したオンライン診療・電話診療なるものは絶対できないと考えています。政府やマスコミはオンライン診療をさも素敵な進歩的なスタイルのように言いますが、他科の医者からも反対意見が多く出てします。内科医なら「おなかを触らなきゃ、肺や心臓の音を聞かなきゃ分からないよ!」耳鼻科医なら「私たちは喉や耳の中を診なきゃ診断できないのよ!」と。医は生きている人を医者たる人が診るもので、その間の空気のやり取りが重要で必須なのです。教育現場でもそうですが、休校が続いてオンライン授業がもてはやされていますが、中には画面に集中できずさぼっている子や、教師の側もちゃんと伝わっているか手応えがなく不安になると言っている現状があります。COVID-19とは、この人と人の間(人間(ジンカン))を狙って巣食う狡猾で手強いウイルスだと言えるでしょう。
 しかし私論ですが、バーやナイトクラブ・ライブハウスなど密閉された夜の淀んだ空気の中で感染が多く出ていることから、どうもこれは夜の闇で暗躍するウイルスで、太陽光が降り注ぎ自然の風が吹く(空気のきれいな)所では力発揮しない(もしくはいない)ウイルスなのではないか?と思っています。マリンスポーツやゴルフ・テニス・野球・サッカーといった日中(にっちゅう)のアウトドアスポーツは問題ないのではないでしょうか。我がクリニックは、東南西3方の窓から日中ずっと太陽光が燦燦と入る待合室なので、入り口ドアと待合室の窓、時には診察室のドアまで開け放して、換気と採光に努めています。密にならないよう予約人数を疎に制限しているため、患者さんには「気持ちがいいねえ」と言われることがあり、医療だから、と閉鎖的にし過ぎることは良くないのかも、と思わされます。
 ほぼ毎日泳ぎ、筋トレやヨガ等で体を動かしていた私は、プールやジムが長期に渡って閉鎖されたため、やることがなくなり、20年以上使っていなかったミシンを引っ張り出して古い水着やラッシュガードを切って数十枚マスクを作っていました。20200601-1当初は2週間泳げないだけで禁断症状が出そうで、COVID-19ならぬ他の病気になりそうでしたが、筋肉・筋力と柔軟性が落ちてきたため、止む無く遂に生まれつき股関節が悪いため敬遠していたランニングを始めました。最初はあざみ野駅からの坂を駆け上がるのに、足が上がらず息も絶え絶えでしたが、2回目以降はそれほど苦しくなくなり、~45分間、~1時間と徐々に距離を伸ばして青葉区内を走りながら、こんな家が建っていたんだ、これはあの患者さん宅だ!こんなに色んな薔薇が咲いているんだ、と驚き感動しながらアップダウンのあるコースを走っている内に、いつの間にかランを楽しんでいました。先週潮見台の方まで走って行って、途中公園の遊具で懸垂し、美しヶ丘西の住宅街でぐるぐる迷子になり、初めて保木の山の上の農園内を探検まがいに驚嘆しながら走り続けて帰ってきたら、2時間以上経っていました。心肺機能は水泳の練習がハードなため全く問題ないのですが、お尻と膝・股関節が地球との戦い(重力)でこたえ、その後数日間使い物になりません。でもやはり水に入っていないと体が変になりそうで、海に行ってしまいましたが、寒くて波が高過ぎて入れませんでした。プールは次亜塩素酸や塩素消毒しているので大丈夫なはずですが…。しかしながらこのウイルスは、私の病的ともいえる強迫的な水泳習慣(休泳日を取らない)を見事に止めました!
 5月25日日本全国で緊急事態宣言が解除されました。今回の事態で頑張ってる!頼れる!と思えるのは、日本政府ではなく各都道府県知事さんですよね。それはちょうど明治維新の時、徳川幕府ではなく各藩の藩主や志士達が新しい時代に向かって活躍したように。福井県の杉本達治知事は私の高校の後輩で、この度何度かメールで意見交換しましたが、全国に先駆けて県独自の緊急事態宣言をしたり県内にマスク券を配布したりと、先取的発想で迅速に行動したことに思わず拍手しエールを送りました。
 COVID-19が明けた後、以前とは違う価値観の世の中になることが予想されています。疫病には、古い支配者に代わって新たな権威が台頭するという社会のシステムを変える力があります。14世紀の黒死病ペストの時、それまでの支配層だった宗教的権威が失墜し、警察や医者が力を持つようになっていったように。グローバリゼーションが急速に進んだ世界ですが、それ故起こったともいえる新型コロナ危機により、地球上の人-物-金の流れが止まり、“鎖国”のように各国々・各県独自に内向きに懸命にウイルス対策に当たっている今、揺り戻しとして“脱グローバリゼーション”が起きているように見えます。今後どんな新しい国際関係や生活スタイルがどう定着していくのか、簡単には地球上から絶滅しないだろうウイルスとどう共存しながら、人と人との間の見えない空気感~そこでは心のやり取り・共感が在る~を維持しつつホモ・サピエンスを生き永らえさせていくのか、大きな課題です。第2波、第3波及び新たなるウイルスの変異に備えつつ。
 COVID-19新型コロナウイルス感染症によって亡くなられた世界中の方々のご冥福を心よりお祈りします。

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