スポーツメンタルにおけるグローバリゼーション

 7月1ヶ月間に及ぶサッカーワールドカップロシア大会が、フランスの優勝クロアチアの準優勝で終わった。日本は初出場以来最高に良い試合内容でベスト16に入り大いに盛り上がった。4年前もブラジル大会のエッセイを書いていた私は「これは今回も続編を書かなくては!」という気にさせられた。前回惨敗に終わった日本チームは予選リーグ予想外の勝利から始まり、もしかして首位で通過するのでは?もしかしてベスト4に行けるのでは?と言われるほど勢いに乗った。前回そのメンタル面に問題あり!と書いた私にとって、この4年間いや正確にいうとこの直前の2ヶ月間で日本選手たちのメンタルに大きな変化があったと思わされた。開幕直前の監督解任~新監督就任~新たなる代表選手選抜と急造チームの感が強い日本に、私もそうだったが多くの国民が日本チームに期待していなかった。サッカー辛口コメンティエーターSさんは決勝リーグに進める確率は2%だと酷評していた。しかしこの時私は「もしかしてSさんはこのひどい予想で日本の選手たちを発奮させようとしているのかな?そしたら選手たちは本当に発奮して強い決意からもしかして良い結果を出すかもしれない!」と直感した。第1試合コロンビア戦、テレビ中継を録画して、その日の夜はいつものようにプールできつい練習に入ったところだった。直後プールからも見えるコーチルームのガラス窓に「日本1点先制!」という紙の速報が張られた。「えっ!そんな馬鹿な!これは普通の展開じゃない!」と感じた私は、コーチに「ありがたいけど録画しているから速報しないでください。」と頼んだ。帰ってから見ると、やはりハンドのオウンゴールで相手が一発レッド退場!という事態だった。香川のPKを入れた顔に「日本チーム何かが違う!」と感じた。次のセネガル戦も「2-1で日本が勝つ!乾が左から背の高いアフリカ選手の体の横を通すループシュートと、ゴール前の混戦から横に低く飛んだボールに岡崎が横っ飛びで頭に合わせてポロッと入れる。」と予想して我がスタッフに予言した。目を瞑るとその2つの光景が浮かんだのだ。結果2点は岡崎をスルーして本田が入れたのだが、ほぼ的中したのでやや不思議な気分だった。第3戦はポーランド、西野監督の戦略で、残り25分間ボールを回して戦わず、警告数の僅差で決勝リーグに進むという戦術を取り批判を浴びたが、勝負に対する並々ならぬ決意を感じた。決勝リーグでは、優勝候補のベルギーに2点先制し本気にさせ、確かに実力差は大きく負けはしたものの、最後まで勝てると思いながら突き進んだ日本チームのベストゲームだったと思う。

 今回は、スーパースターの新旧交代(メッシ・ロナウドからエムバペへ)を示唆する感があり、VARの導入などもあって、ワールドカップといえば、今までヨーロッパ対南米のイメージがずーっと長く続いていたものが、新しくアフリカ勢や日本を含むアジア勢といった2大主流とは少し違った種類のサッカーが本格的に参入し、本当の意味でのワールドカップになり、サッカー界でもグローバリゼーションが始まっている!と強く感じた大会だった。

 日本人のスポーツメンタルも進化し、世界に臆することがなくなってきた!と感じる。

 競泳界ではパンパシフィック大会とアジア大会で大活躍した18歳の池江璃花子選手、テニス界では全米オープン優勝を果たした大坂なおみ選手など、そのメンタル面の強化が注目された。フランスW杯の時、試合に負けて選手達と次の試合を見ようと観客席からグランドを見下ろした当時急遽抜擢された岡田監督が「俺たちあんな凄い所でバティ(当時のアルゼンチンのスーパースター)と戦っていたのか?」とビックリ仰天したというエピソードからは信じられないくらい世界が近くなったと言える。各界のグローバリゼーションが進んだ今の若者達には、世界を相手に「あがる」という感覚はなくなってきており、特別なメンタルトレーニングは要らないのかも知れない。今夏ハワイのマウイ島へ行ったが、日本にいるのとまったく同じような感覚で過ごし、「外国」という緊張感が全くなかった。アメリカ大陸でもヨーロッパでも同様に「日本人だから下手に構える」ことはなくなってきているのではないだろうか。

 反面スポーツ界のあちこちで、指導者の暴力的指導やパワーハラスメントの告発が相次いでおり、当クリニックにも同種の訴えで受診する人が現れる時代になってきた。確かにそのような指導が1970年代に漫画で「巨人の星」や「アタックナンバー1」などが流行り、いわゆる「スポ根」といって根性を鍛え直す指導として体罰や怒号が当たり前だった時代もあるが、それは戦前の軍隊教育の延長線上にあった負の遺産であろう。今の日本のスポーツ界では、「楽しんで」と口にして試合に臨み良い結果を残す若者達が多い時代になってきている。私もかくいう思春期をスポ根時代で過ごし特訓を繰り返してきた世代である。「楽しんで」が今一良く分からないのでだが、おそらく勝負のプレッシャーを撥ね退けるためのプラスの自己暗示だろう。2020年東京オリンピックでは、地元日本で臆することなく外国勢にひるむことなく、厳しい練習を積んだスポーツを楽しみながら活躍する日本の若者達がいっぱい現れるだろうと予想且つ希望する。こう書きながら、実は私は、マスターズ水泳大会やゴルフコンペでは、いつも最初過度の緊張感から良い結果が出せないまま終わることの多い情けないスポ根世代なのである。
2018.10.9

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